就学前児童施策の再構築

 現在、市が直面している就学前児童施策に対する課題は、
  (1)子育て家庭への社会が一体となった支援 
  (2)保育所・幼稚園施策の質的充実 
  (3)公立保育所・公立幼稚園運営の硬直性と過重な財政負担 
の3点に集約することができます。
 これらの課題は、それぞれが相互に関連するものであり、ともに課題解決されることによって、より大きな成果が期待できるものといえます。
課題解決のための政策形成にあたっては、従来の慣習・慣行にとらわれることのない柔軟な発想をもって、抜本的な施策の再構築を目指す必要があります。



 子どもはもっとも親を信じ、絶対的な愛情を抱いています。親と子の信頼関係のもと、
家庭は幼児期における基本的な生活習慣や生活能力を育むところであり、子育ての原点といえます。
 加えて、地域社会からの多くの理解と愛情、そして行政も加わった厚みのある支援を得ることによって、家庭は孤立感や不安感を解消することとなり、ひいては子どもの健やかな成長につながります。
 そのためには、人々が人間的な相互精神を持つことが肝要ですが、そうした社会の実現のため、社会資本・子育て環境の充実に力を入れる必要があります。すなわち、人々の集える公園や地域コミュニティーの充実、子育てに配慮した街並みやトイレ・エレベーターの設置、子育て支援の重要性を訴える広報活動・情報公開等、「子育て・子育ちにやさしい政策」が徹底される姿勢が必要であるといえます。


家庭
 家庭における育児力が低下したことの背景には、子育ての伝承が薄れて方法論が希薄化したことや競争原理に基づく子育て観の流行による親の焦りなどの社会的な要因はありますが、子育てを家庭だけのこととして閉じこもってしまうことや、逆に子育てを社会や行政にまかせ過ぎてしまうといった、親自身の考え方によることも一因である現象が存在することもみつめ直す必要があります。
 子どもの心身調和のとれた発達のためには、その基本は家庭における保護と教育にあることを自覚し、家庭内での育児力を向上するため、家庭は主体性をもって、子どもに対する愛情と育児の見識を高める努力が必要です。
 ことに、父親の子育てへの積極的な参加は、育児上も社会責任的にも今後、重視すべき要点であるとともに、なにより母親の過重な負担をやわらげ、子どもにとっては、大人のストレスの被害をこうむらない望ましい子育て環境が現出することにつながると思われます。
 市がおこなった、子育てアンケートの中で、「子育てに必要なもの」の問に対し、突出して回答数の多いのが、「配偶者のサポート」でした。父親が、子育てに関わりにくいという日本社会の現状を改善すべく、市は、父親の子育てへの参加について、あらゆる機会を通じ、その啓発と促進に努めることが必要であるといえます。


地域
 親と子それぞれが、いろいろな人とふれあうことは、子どもの心とからだの発達にとっても、また家庭の育児力の回復と向上にとっても、多くの場合、望ましい結果を生みます。
 一方今日、子どもや子育て家庭に対するやさしさが、まわりの地域社会から薄れつつあることも事実です。
 家庭が楽しさと喜びをもって子育てをし、子どもたちがのびやかに成長する社会は、同時に明るく生き生きとした地域社会を築くことにもつながります。
 今まさに、子育てに悩む家庭に対する思いやりと協力が求められており、家庭とともに地域ぐるみで子育てを支えていくということを地域自らも自覚し、地域社会が子育て家庭を受け入れる活動と支援が極めて必要であるといえます。
 そういった意味で、地域社会は共同体意識をもって相互に支えあうことが、個々人の抱えるさまざまな問題解決に役立つということを認識し、地域がさまざまな活動を通じ、その構成員である各家庭とのかかわりを深めていくとともに、必要なときには行政にも働きかけていくという地域発信型の自主的な姿が求められています。


行政
 子育てには、家庭の自立した活動、そして地域の人的・物的環境の整備が基本でありますが、家庭や地域にとって、取り組みが困難なことがらや行政がかかわることによって、より高い効果が得られることがあります。そのため、家庭と地域の果たすべき役割を踏まえ、行政が本来担うべき役割と責任に基づき、明確にその方向性と施策を示さなければなりません。
 市には、保健・医療・福祉・保育・幼児教育それぞれ子育てにかかわる分野に専門機関をもち専門職員が配置されていますが、その業務内容は現行所管する範囲内の限られた事業と、かつ一機関単独の活動にとどまっており、子育て支援に対する広い視点と連携体制の整備の面において、対応の遅れがみられます。
 そのため、各機関の現行所管事業に加え、広い視点をもって、子育て支援事業を明確に位置づけるとともに、さらに各機関と事業の連携を強化した総合的な子育て支援システムを構築する必要があります。
 ことに、地域の自主的な活動を支援するため、地域にある公共施設を利用する側にたって使いやすくすることや地域のサークル・団体との接触を深めること、また人材の養成・確保など地域社会と多面的で実効性のあるかかわりをもつことが必要です。



 子どもの健やかな成長と明るく生き生きとした子育てには、地域社会の理解と協力が不可欠であることについて、前段において種々指摘してきました。以前の子育ての社会資本が未熟な時代には「となりのおにいちゃんおねえちゃんや近所のおじさんおばさん」といった、時にはやさしく時にはきびしい人たちが、地域での子育てを支える力になっていました。
 近年の社会・経済の激しい変化が、そのような地域の関係を薄れさせてきましたが、そうした人たちの価値観の変様を踏まえたうえで、新たな地域の子育てを支える力を考えていかなければなりません。
 地域の子育て力は、行政からのいかなる支援策よりも温かく心強いものであり、地域の子育て力を今日的に構築することが、子育て家庭への支援のもっとも有効な力となるものと考えます。


既存の地域組織
 民生児童委員・公民館地区運営委員会・PTA・町内会・こども会など地域にはいろいろな組織があり、それぞれの分野で歴史と実績に裏づけされた地域活動を行っています。
 まず、これら組織にむけた、地域における子育て支援についての理解と協力を得るための行政からの取り組みを始める必要があります。


新たな地域組織
 一方、地域のなかで子育てサークルや子育てに関心のある人たちによる組織づくりも必要です。
 そのため、そうした組織づくりや円滑な運営のために情報提供や啓発など、組織の育成策を進めていく必要があります。


地域組織への支援
 地域活動の本旨はその自主性にあるといえますが、動機づけ・情報提供・啓発・人材育成など行政からのサポートも重要な役割を担っています。
 後段の「子育てへの総合支援拠点」の章で示しています“総合的な支援拠点”が中心となって、既存の地域組織からの理解と協力、そして新たな組織の育成にむけ、行政からのそれらへの組織支援も重要です。



 平成12年4月1日現在における就学前児童数の50%、また3歳未満児では83%が、保育所・幼稚園に通っていない在宅児童です。
 今日、在宅子育て家庭の育児不安やストレスといったことが社会問題化しており、在宅子育て家庭に対する子育て支援の強化が求められています。
 一方、就労形態の多様化や社会環境の変化などから、保育所及び幼稚園に対しても、新たな施策へのニーズが生まれてきています。         


 また、離婚などさまざまな理由によってひとり親家庭が増加しており、今後さらに増加傾向で推移するものと見込まれます。子どもの健やかな成長を願うとき、ことに母子家庭にあっては、経済的基盤の確立が困難かつ大きな課題となっており、母親への就労支援が極めて重要であります。そのため、各就学前児童施策の形成と実施にあたっては、ひとり親家庭への育児と就労に対する配慮を盛り込んだ総合的施策が必要であると考えます。


 一方、平成11年度の公立保育所運営経費が約36.5億円、児童数1,664人(月平均児童数)に対し1人当たり年額平均219万円が、公立幼稚園では、運営経費約5億円、児童数627人(月平均児童数)に対し1人当たり年額平均81万円という、多大な経費となっており、在宅児童とのサービスバランスにおいて、偏りと不公正さが生じています。
 また現在、公立保育所・公立幼稚園では、自らの改革機能が低下するなか、その運営には硬直化がみられ、新たな施策を実施するとなれば、さらなる財源をともなう、いわゆる積み上げ方式となり、いま以上のアンバランスを助長することが予想されます。


 以上のことから、新規施策にむけた財源の捻出と就学前児童全体ことに在宅児童に配慮した適正なサービスバランスという観点から、公立保育所・公立幼稚園の改革をおし進める一方で、新たなシステムを構築し、在宅子育て家庭への支援の強化と保育所・幼稚園事業の質の向上を図っていく必要があります。



 現在、守口市では小・中学校の児童・生徒数がピーク時の半数以下に減少したことによって、多くの学校余裕教室を保有しています。
 学校運営に際しても基本的に学校側の自主責任が重んじられるべきですが、学校が地域社会に開かれ、かつ地域との連携の強化が求められる時勢のなか、学校余裕教室は学校教育分野の財産という枠をこえ、今日地域教育と地域福祉への資源としての活用が考慮されていい時期が到来していると思われます。
 子育て支援という視点からも、その施設の利用に大きな期待を寄せるものです。       


 活用の一例として、遊ぶ場や活動の場の確保に悩む子育て家庭や子育てサークルへの開放を強く望むところであり、これによって幼児にとっては、異年齢児とふれあう機会が得られるとともに、学校という場への慣れ親しみが培われることとなります。


 また、保育所待機児童対策と子育て支援施策の面から、学校余裕教室を保育室に転用する分園型保育所など、広く保育所施設や子育て支援施設への転用についても、前向きに検討する必要があるといえます。


 公民館は、地域のさまざまな年齢層の人が集う、地域社会の拠点施設であります。
 子育て家庭の親子が、公民館を利用することは、子育て家庭同士の交流にとどまらず、地域社会との連帯性が得られることにもなり、また地域社会にとっても自らの活力を高めることにもつながるという点において、意義があります。
 そのため、公民館では事業と施設の両面において、子育て家庭や子育てサークルに対し、広い観点から館の利用を促進する姿勢が求められています。



 保育所と幼稚園は、3・4・5歳児については同じ年齢の幼児を保育及び教育する施設であり、子どもたちはともに地域で育ち、ともに小学校へ就学します。そういった意味で、保育所と幼稚園はそれぞれがもつ特性をいかしつつ、小学校就学前の社会性や人間性などの習得と小学校教育との連続性において、公立、私立を含め保育所と幼稚園がともに研究・協議する機会、さらに小学校とも交流の機会が必要です。     


 また、公立の保育所と幼稚園にあっては、保育士と幼稚園教員双方の資格をもつ職員の人事交流は、保育と教育の融合という面のみならず、効率的で柔軟な運営という面においても有効であるため、その実施を検討する必要があります。



 市の子育てアンケートの中の、「生活環境で必要なもの」の問に対し、もっとも多い回答が、「公園などの遊び場」であり、子育て家庭が公園の整備を強く望んでいることがうかがえます。遊ぶ場と交流の場が量と質において確保され、かつ日常の生活の場が安全であることは、子どもと親にとって基本的な願いです。


 そのため、市は公園の衛生の向上と、幼児が遊べる遊具の整備に努めるとともに、身近な公共施設においても、幼児と親にとって居ごごちのよい施設として、より一層の整備に努める必要があります。
 また、安心してベビーカーで通行できる道路の整備にも配慮する必要があります。

● 戻る  ● 次へ 


Copyright 2002 Moriguchi-city Osaka-pref JAPAN.All Rights Reserved.