
この世に生を受けた子どもは、どんな手も寄せつけない厳然とした個としての育ちの核をもって、他の誰とも違う一人の人間として生まれてきます。しかし一方、多くの手が添えられること無しにその子らしい固有の特性として生き
られることは不可能です。人間としての発育発達の道筋を充分に呼吸することを通して、子どもは自分らしい存在を創りあげていくのです。
乳幼児期の育ちの原点は「からだ存在」が温かく心地よいこと、すなわち「在ること」に安住できることといえます。おおらかに食べ、眠り、排泄し、そして優しい抱っこ、そのような快さの中で人間の感情発達にかかわる大脳の
古い皮質は伸びやかな活動が可能となり、身近な人、物、事柄に対する興味や 豊かな感受性が育っていきます。乳幼児期の精神・身体的発育は人生のどの時
期よりも速度が速く、怒りや恐れ、嫉妬や喜びそして得意さなどの感情は2歳 頃にはほぼ大人と同じほどに分化・発達するといわれます。それらの感情体験
は古い皮質にしっかりと記憶され、その後の体験を支えます。したがって逆に 「在ること」が冷遇されたり脅かされるとき、この脳の中心部は萎縮し発達は抑制されてしまうのです。
やがて成長にともない、学校教育などの知的・文化的活動は、主として大脳 の新しい皮質で行われますが、それは幼児期における、古い皮質の充分な活動
を土台にしてはじめてその意味も価値も広がり深まっていくのです。
子どもが健康であることは、世界保健機構(WHO)の定義を待つまでもな く、単に病弱でないということにとどまらず、からだ・心・さまざまな環境へ
の興味関心、活動性に生きるエネルギーが充ちていることなのです。
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