はじめに

 『子どもを健やかにどう育てるか』ということについては、過去から永遠のテーマとして機会あるごとに大いに議論され、今日に引き継がれてきたところです。
 戦後の貧困期に始まり、高度経済成長期、バブル経済の好況と崩壊から、現在の不安定な経済変革期へと続く社会経済の変遷は、子育てをする家庭にとっても、さまざまな変化と影響をおよぼすこととなりました。
 従来の子育て家庭に対する情報源は、自分たちの親や年輩者の子育て経験による知識とかかりつけの医師の助言、そして、わずかに出版されている育児書などに限られていました。今日では、それに比べると多くの情報源があり、子育て情報が容易に入手できる時代になったといえます。
 しかし、多様な情報があるにもかかわらず、少子化や近所づきあいの希薄化、子育てへの意識変革などにより、子育てをすることが一面ではたいへん難しい時代になったといわれています。
 複雑化する社会環境のもと、家庭における育児力・教育力の低下が指摘されるなかで、家庭だけによるその回復と向上もまた困難になりつつあるうえ、さらに今後は、低成長経済への移行と少子高齢化がいっそう進行するなど、社会経済の構造そのものが大きく変化することが予想されます。
 社会情勢が変化していくなかで、いまの時代の子育てを十分に全うしていくためには何が必要なのか。守口市における子どもたちの「誕生」に、健やかな「育ち」をどうもたらしていくのか。市として、早期に取り組むべき事項及び将来を見すえた中・長期的な展望をあわせもった事項を包含した、新たにかつ的確な子どもの育ちと親の子育てを支援する今日的な幼児施策の形成と実施が急務であるといえます。
 これまでの幼児施策といえば、そのエネルギーの大半を保育所における保育施策と幼稚園における幼児教育施策にそそがれてきましたが、昨今は、保育所・幼稚園の枠をこえた子育て環境整備への期待感が高まっております。特にこれまでは、在宅における子育て家庭に対する視点が希薄であった感があり、その支援施策の強化がことに急務であります。そして在宅児、保育所児、幼稚園児の就学前児童すべてをとらまえた、バランスのよい総合的な政策形成が必要であります。
 しかし、現在、公立保育所・公立幼稚園に要している運営経費が莫大な額となっているという問題を抱えている状況のもと、新たな幼児成育支援施策の実施を目指す場合、さらに公費を積み上げることとなれば、行政の公平性という点において、市民合意が得にくいといわざるを得ません。
 そのためには、公立保育所・公立幼稚園を改革し、その運営の効率化を実現することによって得られる財源をもって、保育所・幼稚園施策ではまかなえない社会ニーズにこたえる新たな幼児施策に対する原資とすべきであると考えます。
 また、地域で生活する子育て家庭にとって、地域の施設や人材の果たす役割の大きさについて、家庭も地域も行政もその認識を欠いていたという側面もあり、「社会全体で子どもを育てる」という視点で考えることが大切であるといえます。
 加えて、子育て中の家庭が自らが地域とのかかわりを深めていく姿勢をもち、また地域社会の人たちからも思いやりと協力が得られるという地域社会の形成が可能になるような人間的な思いやりのある街づくりを目指さねばなりません。
 以上述べてきた基本的な考え方のもと、市民自らの選択と責任の時代に移行しつつあることを踏まえ、家庭・地域・行政の果たすべき役割を明らかにすることによって、現行幼児施策の抜本的な再構築と将来にむけたシステムづくりを急ぐ必要があります。
 また、21世紀に実現が期待される男女共同参画社会にむけて、従来社会制度や社会通念上、「育児」を女性の役割とし、男性は経済的に支援するものと位置づけられてきた「男は外、女は内」という性差によって区別されていた男女の役割を見直し、男性も女性も均等の立場で育児にたずさわり、かつそれぞれの個性を発揮して人間的充実を得られる社会に変革していかなくてはなりません。
 これからは、特に子どもを産む性である女性が、子育ても自己実現をも両立できるライフプランニングをしていく時代になると考えます。その観点からは、子育て各期の楽しさや充実感を十分味わえることができる子育て支援が市民から求められていると考えられます。
 いま、子育てを自分の手でしようとしている人たちが、子どもの育ちを理解し、子育ての不安を少なくして、子育てへの抵抗感を少なくするような支援策が必要です。
 子育てをする家庭はもちろんのこと、地域社会すべてのものが子どもの小さな成長の積み重ねを相互に共感し、「子どもへの愛情」が自ずと発露される意識の醸成と社会の創造を、今後の子育て支援の基本理念とされることを強く望むところであります。

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